この間、植樹の作業をしている方にお会いしました。お仕事ではなく、自分の家の庭に木を植えていたのですが、ずいぶん高齢に見えたその方は「私が生きている間には、この木は小さいままだけど、孫が見上げてくれればいい」と言っていました。自分は孫の成長を見守ることはできないから、この木にその役目を託すのですって。なんとも素敵な話ですね。
もちろん、庭に木を植える理由はいろいろあるでしょう。でもこれを知って以来、私はどの家庭にもそれぞれドラマがあるのだなあと思うようになりました。小説や漫画になるほどドラマチックではないかもしれないけれど、皆確かに、生きています。各家庭によって、心和むストーリーがあったり、波乱万丈な人生があったりするのです。そう考えると、これまではたいして気にもとめてこなかったご近所さんに、いっきに興味がわきました。
ただいきなり、根掘り葉掘り聞くわけにはいきませんし、話を聞くために仲良くなるのもおかしな話です。だから私は、気になるような可愛い家を見つけたり、美しい庭を発見したりした時は、その様子から見ず知らずの家庭のイメージを想像しています。知っている人相手では失礼でも、物から考えるのであれば問題はないでしょう。