「雷神」(著:道尾秀介)の小説を読んだのでネタバレなしで軽い感想を。
一言でいうと、めっちゃ面白かった!
「ああ、小説ってやっぱりこんなにも人の心を揺さぶるものなんだな」って改めて思わされました。
まず、物語の舞台とか登場人物の雰囲気が「昔から知ってるけど話したことない人」に近くて、すごくリアルだったなと。
登場人物それぞれに「見られたくない過去」だったり「隠している思い」が確実にあって、でもそれをがっつり突きつけるわけじゃなくて、じわじわと伝わってくる感じというか……。
だからこそ、物語が進むにつれて「この人、実はこういう人なんじゃないか?」っていう想像がどんどん広がっていって、読みながらずっと“疑問”が頭の中をくるくるしていました。
伏線らしきものが前半にちらほら出て、「あれ?これどうつながるんだろう?」って思ってたら、後半に入ってからそのひとつひとつが線でつながって、「あ、これだったのか!」って。
爽快な“謎解き”というよりは、「ああ、そうか……そういうことだったのか」って体が少し沈むような、重さのある余韻が残るタイプですね。
それから、タイトルの「雷神」が示すものも、単純な謎やトリック以上のものを感じました。
偶然とか運命とか、人がどうしようもない力の中でどう生きるか、みたいなテーマが根底にあって、物語の端々から「この人たちは何を背負ってるんだろう?」っていう思いを抱かされました。
ただ一点、すごく個人的な感想として、「もっとスッキリというか爽快に終わってほしかったな」という気持ちが少々残りました。
謎が解ける喜びと同時に、「ああ、こういう結末なんだ」というある種の諦観みたいなのも感じて、それがいいんだけど、ちょっと胸にひっかかる感じもあり……。
まあ、それがこの作品の良さでもあのかもしれませんが。
結論として、ミステリー好きな人にはぜひオススメしたいし、しっかりと物語の深みを味わいたい人にも向いてる一冊です。
読むときには“楽しむ”というより“味わう”という感じで読んだら、きっといいのかもしれません。
後味はちょっとだけ悪いです。でもそれが良いんです。