先日、古本屋の前にある黒板……と呼んでいいのでしょうか。マジックで手書きができる看板に、詩の一節が書いてありました。ここの主は、こうしてお気に入りのフレーズを書きとめることで、道行く人の足を止めようとしているのです。これは本人に聞いたことなので、確かですよ。私は何年も前から、この書店に通い続けています。
看板に書かれた言葉が気になって、入口のガラス越しにひょいと中を覗いたのがきっかけでした。偶然主と目が合って、なんとなく入らなければいけない雰囲気になったのです。しかし実はその時は、ここが書籍を扱っているとは知りませんでした。だって明らかにカフェっぽい看板が出ているし、どちらかと言えば事務所のような外観なのですもの。戸はガラス張りだけど、あとは普通の壁なので、遠くから中を見ることはできないのです。
こんなお店で人が来るのかと思いきや、けっこうたくさんの常連さんがいる様子。チェーンでない古本屋は少ないので、自然と読書好きが集まるのかもしれません。それとも主の人柄かな。気さくで朗らか。なんでも笑い飛ばしてしまう元気があるので、顔を見るとそれだけで、明るい気持ちになることができます。今後も長く続いてほしいお店のひとつです。