小説はいつも、カバーをかけて読んでいます。読了するとそれを外すのですが、たいていは、この本はこんな表紙だったのか、と驚きますね。長年間に、何度も読み直して愛読したもの以外、どんなデザインだったか忘れてしまっているからです。今回読み終えたものも同じ感想を抱きました。しかし同時に、内容のイメージが凝縮されていることに、関心もしたのですよ。話を知っているからこそわかる感動というのでしょうか。
それを書棚に並べて背表紙を見たときは、とても安心します。これでやっとこの本を全部読み終えた、このストーリーを、胸に置いておくことができる、と思うのです。店頭で購入する時のみならず、手に入れた後もこうして目を引き付けるなんて、表紙ってすごい。カバーをつけるのが日常になるまで、まったく気がつきませんでした。
おかげで今は、本棚を眺めるのが半ば趣味のようになっています。内容を思い出し、読んでいた時の気持ちに再度触れて、どきどきするんです。自分は単純だなと思いつつ、この幸せを満喫しています。何せ、新刊を買う必要がないので、お金もかからずお手軽なんです。次に素敵な出会いもするまでは、しばらく、書棚を眺めて楽しんでいようと思います。